子どもの頃はこれらの受容体が非常に密集しており、特に苦味や酸味に対して敏感です。
しかし、年齢とともに受容体のターンオーバー (再生サイクル) が変化し、新しい受容体が生まれ変わる速度が遅くなっていきます。(Fukunaga et al., 2005)
これにより、苦味や酸味に対する敏感さが低下し、以前は苦手だった食材を受け入れやすくなるのです。
また、成長すると味覚だけでなく、嗅覚や口腔の感覚全体も低下することが示されています。(Braun et al., 2022)
これにより、若い頃には非常に苦く感じたコーヒーや野菜が、大人になると平気になることが多くなります。
さらに、成長に伴う神経の変化も影響を与えています。
特に、口腔や咽頭部の感覚を司る神経が年齢とともに減少し、感覚の鋭さが失われることで、味覚や嗅覚の低下が進むとされています。
このことが、味の感じ方に対する年齢による変化をさらに助長します。
これらの変化が、大人になると食べ物の好き嫌いが自然に減少する一因です。
特に、子どもの頃に敏感であった苦味や酸味に対する抵抗が薄れ、より多くの食材を楽しむことができるようになります。
成長に伴って食べ物に対する好みが変わるのは、体の自然な反応といえます。
しかし、なぜ食べ物の好き嫌いは生まれたのでしょうか。
食べ物の好き嫌いは進化がもたらした生存戦略だった?
私たちの好き嫌いは、進化の過程で形作られたものかもしれません。
苦味や酸味に敏感であることは、毒性のある食べ物を避けるために重要でした。
このため、子どもの味覚が特定の味に対して敏感であるのは、危険なものを避ける生存戦略として機能していたのではないかという説が有力です。(Breslin, 2013)