過去、メイン州での演説でトランプ氏は「アメリカは日本を守るために血を流すが、日本人はただTVを見ているだけだ」と発言し、賛否を巻き起こしました。

10年ほど前までの冷戦時代と異なり、現在は米軍基地の提供だけでは、アメリカへの同盟国としての軍事力による貢献が不十分とされています。日本が「ただ乗り」と言われる状態を続けられる状況ではありません。

安全保障の現実を知らない日本人が多すぎます。日米安保条約は軍事同盟であり、世界の軍事同盟の常識は必要であればお互いに血を流して守り合うことです。しかし、日米条約だけは、日本が基地を提供する代わりに米国が有事の際、日本を守る義務を負い、日本は憲法9条を理由に有事でも米国を守る必要がないという、人類史上他にはない特別な片務条約です。

米国人の多くや米議会ですら、そんな信じられない片務条約が日米間に存在することを知りません。もし知ったら、日本にも米国の防衛義務を求める内容に改正される可能性が高いでしょう。一部の日本人が主張する、日米地位協定の不平等性や改定すべきだとの意見も、逆に日本に不利になる可能性が高く、日米両政府とも改定案を米議会に持ち出せない状態です。その代わり、問題が起きるたびに日米委員会で調整してきたのです。

安倍元総理は、世界の軍事同盟の常識である「集団的自衛権」の必要性を認識し、一部容認を閣議決定で押し切りました。

信じられないことに、トランプ大統領誕生が「自立した日本」への良い機会として歓迎されている人もいます。しかし、対米自立にはまず安保条約の破棄が必要です。

具体的なシナリオを教えていただきたいものです。対米自立には、まず安保条約の破棄が必要です。米国政府に複数回確認しました。1年の事前通告で相互に可能です。世界に類を見ない片務条約で米国に守られ続けるならば、自立した「主権国家」日本はあり得ません。

平和に慣れ親しんだ日本人には、理解しにくいかもしれません。私が直接取材したベトナム、アフガニスタン、イラクなどの戦争体験者が米国には多数います。戦死者はもちろん、手足を失った人や、PTSDで10年以上経っても精神的に苦しむ人も多く、家族や近親者、友人などもその影響で苦しんでいます。