「党支部に党勢拡大のための活動費として提供したもので、候補者に対するものではない。選挙のためには使わない」

などと反論したことで批判はさらに炎上、自公両党の大惨敗につながった。

一方の野党側では、野党第一党の立憲民主党は、50議席も議席を伸ばして大躍進したが、野田佳彦代表をはじめ、「裏金問題」を徹底批判したに過ぎず、「年収の壁打破」等の政策を掲げ若年層の支持を集め議席を4倍増させた国民民主党以外に、与党側との対立軸となる政策が支持されたわけではなく、また、政策遂行能力を示したわけでもなかった。

少なくとも、「裏金問題」の追及によって、野党に対する国民の期待や信頼が高まったわけではない。

政党間のイデオロギー対立が希薄となり、政策面でも、積極財政・消極財政、消費税減税の可否、憲法改正の是非なども、政党内での意見も統一されていない状況にあり、政党選択と政策選択とは必ずしも直結しない。それだけに、有権者の選択においては、政策面の違いより、「政党・政治家への信頼」が選挙における選択の大きな要因になっていることが示されたのが今回の選挙だったと言える。

総選挙後、少数与党となった自民党の石破首相は、28議席となった国民民主党に政権運営への協力を要請するなど、国会での多数派工作を行っているが、いずれにしても、自民党の大惨敗と野党第一党の立憲民主党の大躍進の原因となった「裏金問題」は、与野党勢力が伯仲する今後の政治状況や国政選挙に向けて、引き続き重大な問題となっていくことは避けられない。

「裏金問題」とは、どういう問題なのか

では、今回の総選挙の結果に決定的な影響を与えた「裏金問題」というのは、いったい、どういう問題なのか。

明らかになったのは、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐって、ノルマを超えた売上が「収支報告書に記載不要の金」として派閥側から所属議員側に「還付金」ないし「留保金」として供与され、実際に、所属議員側では、政治資金収支報告書への記載は行っていなかった。その金額が、清和政策研究会(安倍派)では5年間で総額5億円以上に上っていた事実である。