量子的相関関係は機械が自身の潜在的なエネルギーを解放するための鍵のようなものです。
この鍵を上手く使うことで、電池が提供するエネルギーに加えて、機械は自身の内部エネルギーを活用して、より多くの仕事を行うことができます。
あえて人間食事に例えれば量子的な相関関係は覚せい剤であり、少量の食事をとるだけで、体に蓄えた脂肪を沢山燃焼させ、取り入れたカロリー以上の動きをできるようにしてくれる仕組みと言えるでしょう。
(※この技術は量子力学の仕組みを使って充電量より多いエネルギーをなんとか絞り出しているのであり、無限にエネルギーを供給できる永久機関ではありません。)
実際の研究では下の図のような設定が行われ、左側の量子電池(B)から右側の機械(C)に向けてエルゴトロピーが移動する様子が描かれています。
ここではその様子を量子的相関がある場合とない場合について、具体例を用いて解説したいと思います。
まず電池Bと機械Cは、通常の接続とは異なり、量子的な相関(例として「量子もつれ」を含む)を持ってるとします。
例として、電池Bと機械Cがそれぞれコインを持っていて、このコインの「表」と「裏」の状態が量子もつれによって関連していると考えます。
相関がない場合、電池Bから機械Cへのエルゴトロピーの転送では、電池Bが失ったエルゴトロピーの量がそのまま機械Cのエルゴトロピーとして受け止められます。
例えば、電池Bが10単位のエルゴトロピーを失った場合、機械Cでは10単位だけのエルゴトロピーを得るという、通常のエネルギー移動のような関係です。
量子的な相関(例:量子もつれ)があると、この関係によって機械Cが電池Bから失われる以上のエルゴトロピーを得ることが可能になります。