その後も豪雨は続き、当初気象庁が予測していた一日の雨量1平米当たり150MMが、実際にはその3倍の500mmの雨量があったということで、午後5時30分頃には事態は深刻化した。

深刻な事態になってから中央政府は500人から成る軍隊を追加派遣した。それでも不十分と見た中央政府は5000人の軍隊を派遣すると表明。全てが小出しにしかやらない。緊急事態に備えている軍人は12000人いるというのにだ。しかも、バレンシア市の周辺だけでも迅速に5000人の軍隊が招集できたのに、スペイン政府はそれを無視した。

マソン州知事に非難が集まっているのは、前政権が緊急時に対応できる緊急部隊の創設を計画していたのを、マソン氏が政権に就いて4か月目でその部隊を廃止したということに批判が集まっているからだ。しかし、これはまだプランに上がっていた段階のことで、実際にその緊急部隊が既に存在していて、それを廃止したというのでない。中央政府の与党支持派はそれを材料にしてマソン州知事を批判している。

それにしても、29日の10時に中央政府が掴んでいた大洪水が発生する可能性はあるという情報を瞬時に州政府に伝えられておれば、今回のように多くの死者が発生するという事態は避けることができた。それをやっておれば、市民は避難するのに十分な時間があり、車も安全な場所に移すことができた。例えば、パイポルタ市では雨はそれほど多くなかった。しかし、水路から水が氾濫し始めたのは午後5時頃からである。それまで多くの市民には洪水の危険性など知らされていなかった。

日本でも報道されている車が折り重なって、通りいっぱいにぎゅうぎゅう詰めのようになっている映像は、一般に多くの住民は道路の両側に駐車する習慣があるからだ。それが今回のように通りが水路となって激流がそこに流れて駐車していた車を運び去ったというわけである。それが映像に写しだされた姿である。

市民の携帯に警報が鳴ったのは午後8時すぎであった