何故、中央政府はそれをしなかったのか。理由は明白にはされていない。しかし、推測されているのは、バレンシア州政府は野党第1党国民党の政権だからである。しかも、総選挙を今実施すると国民党が勝利して政権に就くというのは明らかになっている。社会労働党のサンチェス首相は首相であることへの我欲が強い人物だ。彼の夫人と弟が汚職で起訴されて公判中であり、その背後にはサンチェス首相が関係しているということが明白になっている。にも拘らず、彼は今も辞任しない。理由は首相であり続ける為だ。
首相というのは国民を保護するというのが一つの重要な使命である。それが彼の場合には頭にない。彼には首相であり続けたいという我欲に支配されて国民を犠牲にすることを厭わないのである。
大洪水が発生することが確かであるという危険性が伴う場合には、中央政府は州政府に相談することなく、中央政府の独断で『市民保護の為の緊急国家プラン(PLEGEM)』を発動できた。ところが、サンチェス首相はそれを発動しなかった。発動していれば迅速に救助に必要な軍隊などを派遣できた。それは仮に州知事の同意がなくても出来た。その為に12000人の軍隊を動員できた。
ところが、サンチェス首相はバレンシア州政府が頼んでくれば、それに応えるという受け身の姿勢でいたのである。そして州政府からはその要請はなかったとしている。
バレンシア州政府は勿論そのような重大な情報は29日午前10時の時点では掴んでいなかった。だから同州政府は手元にある気象庁からの情報を基に午前12時に、マソン州知事は午後には豪雨は和らいで来るということをテレビインタビューの中で語った。この気象庁のレーダーは1年前からうまく機能していないということが今回の事件を切っ掛けに明らかにされた。
ところが、午後3時30分になるとワインの産地であるレケナ市とウティエル市を流れるマグロ川から氾濫が観察されるようになり、州政府は慌ててスペイン軍の緊急部隊に出動を要請した。それに対して、中央政府は僅か1200人の軍隊を派遣しただけである。レスキュー隊は軍隊の支援が十分でないので効率的な救助作業ができないと表明した。