この実験では、動画から明らかなように、フタを開けて水を流すことで、エアロゾル粒子はロケット噴射のように舞い上がり、そこから部屋中に広がることが分かりました。
では、どんなケースでも同じように飛沫やエアロゾルは広がっていくのでしょうか。
また、フタを閉めていれば問題ないのでしょうか。
このような、より具体的な疑問の答えを提出するため、産総研の福田隆史氏ら研究チームは、水洗トイレにおける飛沫の挙動を可視化し、様々な観点から分析しました。
彼らは最初に、便器のフタが空いた状態で、大きさの異なる飛沫やエアロゾルがそれぞれどのような挙動をするのかレーザーを用いて可視化しました。
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その結果、大きな飛沫は放物線を描いて落下するのに対し、小さな粒径(10μm以下)のエアロゾルは浮遊し、気流によって流動していることが分かりました。
このサイズのエアロゾルは、トイレの個室内に数分~数十分間漂う可能性もあります。
加えてこの実験では、便座手前側で大きな粒径の飛沫が多く発生し、便座中央から置く側で粒径10μm以下のエアロゾルが多く発生していることも明らかになりました。
次の実験では、フタを開けた便器から発生するエアロゾルの粒子数と空間分布を測定しました。
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その結果、エアロゾルは均等に広がるのではなく、前後に指向性を持って放出されていることが分かりました。
これは便器内の水流が作る空気の流れが影響していると考えられます。
加えて、湿度ごとの実験により、環境湿度が高くなるにつれて、発生するエアロゾルの総体積が増大することも分かりました。