独文学者(ニーチェ研究)で保守の論客としても知られた、西尾幹二氏が亡くなった。1935年生で、享年89歳。ご冥福をお祈りする。
平成が青春だったぼく(79年生)の世代にとって、西尾さんはなんと言っても「新しい歴史教科書をつくる会」(97年結成)の初代会長である。実は、つくる会的なネオ・ナショナリズムには批判的なリベラル派にも、ちゃんと人文的な教養を持っている人には、隠れ西尾ファンが結構多い。
まぁまさにぼくがそうで、他にもいっぱい知ってるんだけど、名前を出すとぼくはともかくその人たちに迷惑が生じる恐れがあるから(苦笑)、そういう品のないことはやめておく。
膨大な西尾さんの著書のなかで、まさにいま読まれるべき本は、冷戦終焉の直後に東欧旅行記として書かれた『全体主義の呪い』(93年)だと思う。2002年の小泉訪朝後に高まった北朝鮮バッシングに便乗して、『壁の向うの狂気』(03年)として出し直したあたりは感心しないんだけど(*)、日本の知識人による不朽の歴史の証言だと、ぼくはマジに信じている。
(*)ネトウヨのみなさんはいま怒ったかもしれないけど、帯でヒトラー・スターリン・金正日とフセインを並べて、イラク戦争を肯定したあたりはご本人も後で反省したと思いますよ。西尾さん、一本気だし。