11. 高齢就業者で被雇用者543万人のうち、非正規雇用は417万人(76.4%)であり、被雇用者全体の52.7%が「パート・アルバイト」であった。
制度設計の変更と高齢者意識の変容とりわけ、60~64歳の就業率は74%になり、その年代層の3/4を占めている。また、70~74歳でさえも34.0%になり、3割を超えている。
このような高齢者就業率の持続的増加の背景には、出生数の漸減にともなう子ども実数の減少が若年労働者の減少につながること、それを代替できる年齢層として、定年退職後の60歳代高齢男女並びに70歳前半の高齢者が期待されるようになったことが指摘できる。
そして遅ればせながら、2024年9月13日に岸田前内閣で閣議決定された「高齢社会対策大綱」でも、「年齢によって、『支える側』と『支えられる側』を画することは実態に合わない」(:1)としたように、政府による制度設計がそれに対応してきた事情があげられる。
12. 会社役員が11.6%、自営業、家族従業者などの合計が28.4%、役員を除く被雇用者が60.0%を占めた。
生きるよろこび「高齢社会対策大綱」では、65歳以上の就業者の伸びが20年間連続で続いていること、ならびに60歳以上のうち約9割が高齢期にも就業意欲が高いことを強調している」(:3)。
この就業はもちろん高齢者自身の「生きるよろこび」に直結する。それは「生きがい」として、高齢者の日々の暮らしを支える注5)。
生きがい研究の成果20年間に及ぶ「生きがい」についての比較調査研究によって確認できた私なりの暫定的結論は、以下の通りである(金子、2014)。
「生きるよろこび」の軸は個人の生活・生存・維持、およびその個人的目的の遂行過程と達成を喜ぶ心情にある。 高齢者の生きがいは他者から与えられるものではないが、日本には中央政府や自治体による高齢者の生きがい対策があり、条件整備を整えようとするこれらの政策努力は受け入れる。 宗教心が強い社会や個人では、信仰そのものが「生きるよろこび」となるが、日本の高齢者では極端に少ない。 宗教的背景が乏しい日本の高齢者は、就業など世俗的な日常生活において自力で生きがいを得ようとする。
「生きがい」の手段性と表出性
時代の特性としての多様性を受け入れた社会的価値に照らして、日本の高齢者は「生きるよろこび」の下位領域として手段性(instrumental)を重視して、「生きるはりあい」、「自己実現」、「アイデンティティ」などを求める。 加えて、「生きるよろこび」の復活には、表出性(expressive)に富む自己肯定的な社会活動への参加、家族との交流、健康づくり、友人交際、趣味娯楽活動、得意分野の継続が有効である注6)。 「生きるよろこび」は日常的な自己の評価と未来を遠望した際の自己評価との一致度で得られる。 日常的肯定としての高齢者の「生きるよろこび」は、active aging、positive aging、productive agingなどの類似概念に接合可能である注7)。
これら8項目の理解から、生きがいを「生きるよろこび」とだけ定義して、「ひとは自分が何かにむかって前進していると感じられるときにのみ、その努力や苦しみをも目標への道標として、生命の発展の感じとしてうけとめる」(神谷、1966:22)とする観点を堅持しておきたい。
高齢者の社会貢献