つまり変数の数は異なっても、AIがその疑似神経系(脳)の中に確立した物理法則は、現実と遜色なく機能する法則だったのです。
そうなると気になるのが「AIが認識した変数がどんなものなのか?」です。
研究者たちはさっそく、AIが認識した変数の視覚化を試みました。
すると、驚きの事実が判明します。
人類が知る二重振り子運動の変数は上腕と下腕の角度や角速度など4個の明確に定義されたものになります。
しかしAIの認識した変数を視覚化したところ、変数の2つは腕の角度に大まかに対応しているように見えましたが、残りの2つは謎でした。
そこで研究者たちは、この謎の2変数の正体を調べるため、運動エネルギー・位置エネルギー・角速度・線形速度など人類が知り得る限りのさまざまな物理量を当てはめ、相関関係があるかを調べました。
しかし、完全に一致するものは何もありませんでした。
また同様の結果は上の図のような「単純な円運動」「渦巻運動」「単純な振り子運動」「スイングする棒の運動」「伸び縮みする腕で作られた二重振り子運動」など、人類にとってすでに解明済みと考えられていた他の運動法則にも当てはまりました。
この結果は、AIが人類が運動法則を理解するにあたって使っている物理量以外の「何か」を変数として利用して、さまざまな独自の物理法則を成り立たせている可能性を示します。
研究者たちは、現状ではAIだけが認識できる変数から構築される物理学を「代替物理学(Alternative Physics)」と呼んでいるようです。