ICCにとっては、進むも地獄、退くも地獄、という状況だ。厳しい状況だが、そうだとすれば、戦争犯罪を処罰する国際機関として存在している以上、進むしかない。だがそれによって発生する脅威によってICCが倒されてしまわないかどうかは、わからない。
非常に気になるのが、ロシアのウクライナ侵攻については「国際社会の法の支配」などの観点から、ICCを非常に重視し、頻繁にICCへの支援を口にしていた日本政府が、ガザ危機をめぐっては、沈黙を貫いているかのように見えることだ。
赤根所長は、日本の検察の出身だ。最近、何かと不祥事等で話題になることが多い、あの日本の検察である。ただし赤根所長は、検察コミュニティの中で、多数派とは言えない国際畑を歩んできたキャリアを持つ稀有な人材で、日本の検察ではトップにならないとして、国際裁判所ではトップになった、という人物である。ICCに対しては法務省と外務省の二つがかかわり、法務省関係者の中の派閥がかかわる。都合のいいときには「うちが」になるが、都合が悪くなると「うちじゃないだろう」になる。
ICCの浮沈は、日本外交にも影響する。大丈夫だろうか。心配な状況である。
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