ICC関係者は、この騒乱をよく記憶している。そしてイスラエルに対する捜査が、さらにいっそう激しいアメリカの反発を招くだろうことを予測し、恐れている。
10月24日、衝撃のニュースがICCから発出された。締約国会議議長が、カーン検察官の女性の部下に対する取り扱いが不適切だ、という糾弾の内容の声明を出したのである。これに対して、カーン検察官は、全く根拠がない、とすぐさま反発した。実際のところ、声明文は、検察官の不適切な行動が見つかった、としか述べていないので、どういう状況なのか、全く不明である。なお締約国会議議長はフィンランドで、副議長がポーランドである。
President of the ASP statement on alleged misconduct by an ICC elected official|ICC HPより
さらに10月25日、逮捕状発行を決定する権限を持つ予審部Iのルーマニア出身の判事が、健康上の事情を理由にして、パレスチナに関する事件の担当を辞退したいと申し出てきた、するというニュースが入った。代わってスロベニアの判事が入る。
これらの不透明な動きが、全て欧州、特にイスラエル寄りの色彩が強い東欧出身の外交官や裁判官によって進められていることは、非常に怪しい雰囲気を醸し出している。
もしICCがネタニヤフ首相の逮捕状を発行しなかったら、アフリカの加盟国は反発するだろう。かつてアフリカ人の犯罪者ばかりを裁いている、という理由で、アフリカ諸国が反発して脱退の動きが広がろうとしたときがあった。このときはブルンジだけの脱退で終わったのだが、南アフリカはほとんど脱退間際だった。今回、ICJ(国際司法裁判所)にジェノサイド条約違反でイスラエルを提訴したのが、南アフリカだ。もしICCが「圧力」に負けてイスラエル政府高官の訴追を見送ったら、どのような反応をするか、わからない。とにかく大変な事態にはなるだろう。