■ フォント名に後悔
今回話題になっていることについてララビー氏に連絡をとったところ、とても興味深い話を聞くことができた。
実はララビー氏にとっても「Electroharmonix」には色々な思い入れがあるという。
このフォントが最初に発表されたのは、1998年3月25日。カタカナ、ひらがな、漢字の文字に触発され、疑似日本語としてデザインされた。もちろん当初から日本語としては読めないものとなっている。
そして名前の由来はギター用エフェクトペダルの会社名「Electro-Harmonix」から。ララビー氏は当時、その会社が廃業していると思い込み(実際に2度倒産している)、名前の「ヴィンテージな雰囲気」も気に入っていたことからフォント名に採用。しかし後に新しい社名で会社は復活。「Electro-Harmonix」もブランド名として大復活をとげ、現在業界では主要メーカー(ブランド)として認知されている。
「その名前を見るたびに……そしてフォントを見るたびに身が縮む思いがします」(ララビー氏)
ちなみにフォントの方の「Electroharmonix」でもリリース以降、さまざまな変化が起きている。まず2010年代初頭にはデザインを一部整理、改良した「改良版」をリリース。次に、当初は無料の商業利用デスクトップライセンスでリリースされたものの、2024年4月にはパブリックドメインに置かれている。
■ ララビー氏の心は名古屋人
ララビー氏にとって「Electroharmonix」は、タイプデザイナーとしての経験と日本との繋がりにおいて重要な部分になっているといい、まさに氏と日本を繋いだ架け橋的存在。
また、日本に住むようになって、感じ方にも変化があったという。特にいま住んでいる名古屋からは強い影響を受けているそうだ。
「まだ日本人として感じるかどうかはわかりませんが、確実に名古屋の人として感じ始めています!」(ララビー氏)
最後に今回話題になっていることについても質問してみた。勿論ご本人も話題の件については把握しており、嬉しい思いで見ていたという。
「皆さんが楽しんでくれて嬉しいです。数日前に 『Reddit』というニュースサイトで話題になっているのに気づきました。フォントの名前が今ではとても恥ずかしいです。今は誰でも使える公共のフォントなので、皆さんが修正したり改良したりしてくれると嬉しいです」(ララビー氏)
日本人には読めないフォントこと「Electroharmonix」は、ララビー氏のフォント工房「Typodermic Fonts」のサイトをはじめ、他の複数サイトでも配布中。「Typodermic Fonts」ではパッケージとして他のフォント類と配布されているので、単体で欲しい場合はフォント名で検索して配布先を自分で探して欲しい。
※ララビー氏とのやりとりは日本語を通じて行いました。ララビー氏からのコメントはできるだけオリジナル要素をくずさないように、簡単な修正程度にとどめています。
<記事化協力>
小山真吾さん(X:@KoyamaSkoyama)
Raymond Larabieさん(Instagram:@rlarabie/HP:Typodermic Fonts)
(山崎尚哉)
提供元・おたくま経済新聞
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