IBAによると、医療関係者による申し立てを受けて2人の選手に検査を行い、厳密な検討の末に「ほかの女子競技者よりも優位性があることを決定的に示す結果が出た」と説明している。検査の内容については「詳細は秘密」という。

「科学的データがもっと必要だ」

女子選手の資格参加問題では、南アフリカ出身のキャスター・セメンヤ選手の例が知られている。同選手は2012年のロンドン及び16年のリオデジャネイロ五輪の陸上女性800mで連続金メダルを獲得した経験を持つ。

2018年、国際陸上競技連盟(IAAF、国際陸連)は「テストステロン値が高い女性の出場資格制限」を設け、参加する場合は薬などでテストステロン値を下げるよう求めた。セメンヤ選手は南アフリカ陸連とともに既定の無効化を求めてスポーツ仲裁裁判に訴えたが、2019年5月、訴えは棄却された。2021年、欧州人権裁判所は、セメンヤ選手の主張を認めて審理の機会を与えるべきとした。その後も紆余曲折があり、未だ法廷闘争の途中である。

セメンヤ選手は筋肉量、筋力、持久力に影響するヘモグロビンを増加させるホルモン・テストステロンのレベルがほかの女性より高いとされている。

近年、「DSDs(Differences of sex development)」という言葉が次第に知られるようになった。日本語では「性分化疾患」と訳されるが、「体の性の様々な発達」を指す。体が「男でも女でもない」ではなく、「中間」でもない。また、ほとんどの場合、自分が生まれた性を自分の性として認識しているので、生まれた性別と相いれない自認を持つトランスジェンダーと同じではない。

セメンヤ選手はDSDsを持つと言われている。先の2人のボクシングの選手がこれに該当するのかは不明だ。IBAが選手への検査内容を公にしておらず、IOCは2人が「女性として生まれ、育った」と説明しているため、判断材料がない。