VunaPayは、2023年にHeifer Internationalがスポンサーを務めるアクセラレータープログラムで助成金を獲得している。Heifer Internationalは、世界中の小規模農家らを支援することで飢餓・貧困問題の解決を目指す団体。さらに2024年5月には、ケニアの通信会社サファリコムと住友商事がアーリーステージスタートアップを対象に実施したSpark Acceleratorプログラムで、受賞企業9社のうち1社に選ばれた現在注目のスタートアップだ。
「小規模農家へのファイナンス」を軸に事業を多角化
上述した農協業務そのものを一貫しておこなっているのが、ガーナのDegasだ。穀物を栽培する小規模農家向けに種子や肥料などの農業資材を貸し付け、農家は収穫した作物の一部で代金を返済する。農家は後払いで農業資材を入手できるため、収量を増やすことが可能になる。一方、収穫した作物は品質を検査したうえで受け入れ、先に支払い、Degasが需要家に販売する。この一連の業務に自社のデジタルプラットフォームを使っている。
農家の与信判断では、モバイルアプリや現地オペレーションを通じて収集したデータをもとに、AIによるスコアリングを行っている。2023年だけで2万7,000軒、同年末時点で累計4万6,000軒の農家にサービスを提供してきた。 外部の資金提供者と農家をつなぐマーケットプレイスの構築を目指したり、マイクロファイナンス機関と提携することで、Dagasが蓄積した農家の与信データに基づく融資の機会を促している。近年は、土壌の有機物を増加させることで炭素を隔離する栽培方法、いわゆるリジェネラティブ農業のアフリカ版の確立に、ネスレと共同で取り組んでいる。実現すれば、肥料の使用量を減らして作物の生産コストを下げるだけでなく、カーボンクレジットを生成し農家にとっての追加収入にできる。