本稿は、アフリカビジネスパートナーズによる寄稿記事である。同社は、ケニアや南アフリカに現地法人を持ち、アフリカ40か国で新規事業立ち上げやスタートアップ投資に関する支援を提供している。現地のビジネス最前線を知る同社独自の視点から、投資家が注目するべきアフリカのスタートアップトレンドを毎月ピックアップして紹介していく。

これまでvol.7、vol.8、vol.9の前3号にわたって、農業スタートアップにフォーカスをあててきた。第10回となる本号では、同じ農業スタートアップのなかでも、日本人がアフリカで起業したスタートアップをとりあげる。

農協運営をデジタルテクノロジーで効率化

ケニアで農協運営の効率化に取り組むのが、VunaPayだ。農協は組合員である農家から作物を受け取り、支払いをおこなう。VunaPayのアプリはその業務を助けるものだ。

ImageCredit:VunaPay

農協は、農家から作物を受け取る際、農家ごとに作物の重さや内容を記録する。VunaPayのウェブアプリを使うと、この受け取り情報をデジタルで記録できる。農家の土地の広さといったプロフィールも記録することで、計量や入力のミスを防ぐ。これまでに受け入れた作物の量や在庫の情報もデジタル化される。

農家への支払いは、アフリカの農協がいつも苦労する点だ。農家から先に作物を受け取り、あとから売却するため、その間の運転資金が必要になる。VunaPayはケニアの大手金融機関との提携により、農協が融資を受けられるようにしている。ここで、農家とその作物の情報をデジタルで記録していることが役立つ。金融機関が与信に使えるためだ。この融資により農協は、作物の受け取りと同時に農家への支払いを行うことができ、農家は数週間から数か月待たされていた支払いをすぐに受け取ることができる。作物をすぐに現金化できれば、農家は必要なタイミングで種子や肥料を購入して収量を増やし、収入を増やすことができる。