以下は実験方法についての説明になります。

調査にあたっては約200人の一般人(非弁護士)が集められ、2種類の文章を書くように依頼されました。

1つ目の文章は飲酒運転、窃盗、放火、麻薬密売などの犯罪を禁止する法律を書くよう指示されました。

2つ目の課題では、それらの犯罪に関する物語を書くよう指示されました。

また被験者たちには、文章を一度書き上げた後に、推敲を行う機会も与えられました。

すると一般人たちが作成した法律文でも、本物の法律のように、文書の中に文章を埋め込む、構造的に複雑な文章が多用されていることが判明しました。

一方、物語文では埋め込み式の複雑な文章は全くみられず、全体的に平易な言葉で書かれていることがわかりました。

また次の実験では80人の被験者たちに、法律文章とその法律を他国からの旅行者に説明するための文章を書くように依頼しました。

たとえば路上にガムを吐き捨てるのを禁止する法律とその説明文といった感じです。

しかしこの場合でも、参加者は法律文では埋め込み式の複雑な文章を使用した一方で、説明文では使用しなかったことが明らかになりました。

これらの結果から研究者たちは、法律文が難解な理由は本質的に呪文の詠唱と同じく文章に箔をつけるためであると結論しました。

この説は学術的には「魔法の呪文仮説(magic spell hypothesis)」と呼ばれています。

魔法の呪文が日常言語とは異なる独特のスタイルで書かれているのと同じように、法律文章の複雑な構造は解りやすさを犠牲にして、特別な種類の権威を示していたわけです。

法律に権威が必要なのは確かです。

しかし権威をあらわす方法に、難解さは相応しくありません。

研究者たちは今回の発見が、法律文章をわかりやすくする努力を促すきっかけになることを期待していると述べています。

また今後は、法律文章の難解さの起源についても調査していくとのこと。