ソマリランドの後ろ盾は、エチオピアであり、UAEである。しかしソマリランドと対立するソマリア連邦共和国政府には、エジプトが接近している。これは、ある見方ではBRICS加盟国内の不穏な関係を示している事情と言えるかもしれないが、少なくとも現時点では、地域的な対立を越えてBRICSが浸透していくアプローチとなっている。
ただし注意すべきは、昨年からの拡大によって、BRICSがユーラシア偏重になり始めていることだ。もともとのBRICSの5カ国は、ブラジル=南米、ロシア=ユーラシア中央、インド=南アジア、中国=東アジア、南アフリカ=アフリカと、異なる地域それぞれの有力国が集結しているという仕組みをとっていた。
それが昨年の拡大によって、ロシアから中東を貫いてアフリカに到達する太い線が形成されることになった。BRICSは引き続きユーラシアの太い線を充実させ、ロシア=イラン=インドを結ぶ「南北輸送回廊」を発展させ、一帯一路に接続していく方向性を強化していきたいだろう。
ちなみに今回の首脳会談の会場であるカダンは、ロシアのイスラム圏の有力都市であり、「南北輸送回廊」の要衝であるロシアのカスピ海沿岸の町アストラハンに通じるヴォルガ川の上流に位置し、中国とロシアを結ぶ陸上交通路の中間点でもある。象徴的な意味に着目して開催地に選んだのだろう。
なお、あとアゼルバイジャンが加入すれば「南北輸送回廊」の主要交通路に位置する国の全てが、BRICS加入を果たすことになる(アゼルバイジャンはカスピ海航路の場合には抜かされる)。アゼルバイジャンのアリエフ大統領は、当然今回の首脳会議に出席している。
BRICSが次に関心を持っているのは、東南アジアである。昨年はASEANの雄であるインドネシアの加入が大きな焦点となった。結果は、インドネシアが中立的外交姿勢を維持するためにOECDとの同時加盟を望んでいることなどから、見送られた。しかし今年のBRICS首脳会議に外相を送り込んでおり、BRICS関与の姿勢はまだ捨てていない。