つまり、ドイツがこの失敗例を肝に銘じているとすれば、将来、たとえ中国が尖閣諸島を占領しようが、あるいは、台湾に侵攻しようが、おそらく目を瞑るだろう。下手に中国を非難して、中国からの輸入が滞ったりしたら、今度こそ経済も医療も完全に崩壊することは自明の理である。今やドイツと中国の力関係は、完全に入れ替わっている。

ちなみに、日本も他人事ではない。中国からの輸入が滞ると困るものは、現在、品薄で問題になっている麻酔薬「アナペイン」だけではない。ドイツも日本も、あまりにも国家戦略がなさすぎる。

かつてドイツと日本の製薬会社は、世界で名を馳せていた。30年近く前、シュトゥットガルトで近所の医院に行った時、私が日本人だということを知っていたベテランの医師が意気揚々と、「良い薬を出してあげます。日本製ですよ!」と言っていたのを思い出すと、まさに隔世の感を禁じ得ない。