―――若手ビジネスパーソンに向けて、自分と違う立場のユーザーのニーズを把握する際のポイントがあれば教えてください。
飯﨑さん:徹底的に自分をそのユーザーの立場に置くしかないと思います。
つまり、自分がターゲットではないことをしっかり認識することなんです。OiTrのターゲットを定め、どのような人にOiTrを設置してもらい、利用してもらいたいのか。どのような人たちにとってOiTrは価値を発揮し、生活を豊かにするのか。ターゲットを具体的に絞り込むことが重要でした。
具体的にターゲット層を代表するような人物を選び、ペルソナ作りをすることで認識を共有しやすくなります。同時に、自分の価値観だけで考えず、固定概念にとらわれず、きちんとターゲットを理解することが大切です。ターゲットを深く理解するために、ヒアリングを重ねながら考えていきました。
例えば、実証テストでOiTrを利用したユーザーから「ナプキンが出てくるとき静かでよかった」という声がいくつかありました。ディスペンサーからナプキンが出てくればそれでいいと思っていたので、音はあまり意識していませんでした。個室トイレ内で生理用品を使用していることすら他人に知られたくないという気持ちがあるとは、正直、想像もつきませんでした。
ユーザーの立場に身を置いて考えようと努めても、実証テストでご利用いただいてはじめて見えてくることも多かったです。特に起業した頃は男性メンバーだけでOiTrを進めていたので、このサービスが男性目線の発想だと思われたくなく、ユーザーに寄り添ったサービスとなるように努めました。
OiTrのディスペンサーに2つナプキンの排出口を設けたのも、その結果です。
機器だけにトラブルもゼロではありません。ナプキンが詰まることもあります。それを想定して、2つ排出口を設けることで、1つの排出口から受け取れなくても、もう1つの排出口から受け取れる仕様にしたのです。ナプキンの収容枚数が同じでも2つ排出口を設けることの違い、この考えが大事なんです。