これらを踏まえて、シドニー大学の研究チームは「立ちっぱなしの生活が体の循環器系の健康にどのような影響を及ぼすのか」をより詳しく明らかにしようと考えました。
立ちっぱなしが長いほど、循環器疾患リスクが高まる!
研究チームは今回、立ちっぱなしがどのような健康利益をもたらすかを明らかにすべく、英国在住の8万3013名(平均年齢61.3歳)のデータを調査対象としました。
この大規模データは英国の長期大規模追跡調査「UKバイオバンク」に登録されている人々から収集しています。
これらの被験者は研究開始時には何らの循環器疾患を有していません。
そして手首に1日の座位時間や立位時間、運動量などを追跡記録できるデバイスを装着しました。
その後、座位時間や立位時間の長さごとにグループ分けして、各種の疾患リスクがどのように異なるかを比較。
すると非常に興味深い結果が示されたのです。
まず従来の研究どおり、1日の座位時間が長い人ほど循環器疾患のリスクが高く、特に1日10時間も座っている人では心血管疾患および起立性疾患の発症リスクが増大していることが確認されました。
起立性疾患とは座った状態から立ち上がったときの血圧の変化で立ちくらみがするような症状のことをいいます。
ところが最も興味深かったのは、立ちっぱなしの時間も長くなるほど健康へのデメリットが大きくなっていることでした。
特に1日2時間以上立ちっぱなしの生活が続いている人では、立位による脳卒中や心不全といった心血管疾患の発症リスク予防にはつながっていなかったのです。
逆にこれらの人は立ちっぱなしが1日2時間未満の人に比べて、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)や深部静脈血栓などの循環器疾患の発症リスクが11%も高くなっていました。
下肢静脈瘤とは、血液が心臓に戻る足の静脈が太くなって瘤(こぶ)のようなものができる症状を指します。