したがって、10年前からそうであるように、「地方創生」は「知恵比べ」の競争なのであり、政府予算からの「地方創生交付金」が1800の自治体にまんべんなく配分されるわけではない。地域間の競争なので、勝敗が必ず発生する。それは学界での「科学研究費」獲得競争と同じ性質をもっている。

これは今回の選挙の争点の一つにもなっているので、各政党による「地方創生」の位置づけと実行可能性にも注目しておきたい。

コミュニティのDLR理論

今回の選挙の1年半前に刊行した『社会資本主義』では、その最終章で「地方創生」を論じた。

ライフワークとしても、マクロな「社会資本主義」において、全国的にみると毎年の出生数が70万人台まで落ち込み、少子化が進む一方で、あと20年は高齢化率が増加しつつ、総人口は毎年80~100万人程度の減少が進むという「人口変容」に対応する戦略として、「地方創生」を位置づけていた(金子、2016)。

このために、地方の事例の単なる紹介を越えて、新しく彫琢したコミュニティのDLR理論に基づいて、「まち、ひと、しごと」のバランスを考慮して、大都市から過疎地域までの各種の「地方創生」の復活を目指そうとした(金子、2023:第11章)。

コミュニティのDLRのモデル

図2は、コミュニティの方向性としてディレクション(D)と住民の力のレベル(L)を接合して、資源(R)としてのリーダーシップと社会資源を新しく加えた理論化の試みである。

社会的な価値がある目標を達成する手段となるものはすべて社会資源とみなすので、ここでは天然資源だけではなく、地理的資源、産業的資源、歴史的資源、人的資源なども文脈に応じて社会資源として使う。

図2 地方創生とコミュニティDLRの関連図 出典:金子(2018:215)

コミュニティのD(ディレクション)

ここにいうコミュニティのD(ディレクション)は、「まちづくりの目標」すなわち生産、物流、販売、消費、観光、教育、医療、介護、福祉などのうち、どれに焦点を絞るかを明らかにすることである。