「社会資本主義」は民間経済資本とこれら三大資本を融合させて、全世代の生活安定と未来展望を可能とし、日本の経済社会システムの全領域で「適応能力上昇」を維持して、世代間協力(金子編、2024)と社会移動が可能な開放型社会の創造をめざすとした(金子、2023:368)。

石破内閣の地方創生戦略

さて、10月4日の石破首相「所信表明演説」ではいくつかの論点が出され、衆議院選挙の争点にもなっている。

「演説」では、首相の持論である「地方創生」に関しては、地方を守る主体は政府・自治体だけではなく、「産官学金労言」であると繰り返された。

いうまでもなく、産は産業界、官は政府・自治体、学は大学を始め高等教育機関・義務教育校や研究機関、金は金融機関、労は労働組合、言は言論機関としての新聞社や放送局を含んでいる。いわば、地方創生の「主体」群として措定されたのがこの6つのアソシエーションである。政治家が不在なのは、「官」として一括されたからか。

石破「地方創生」の目標

「所信表明演説」での地方創生論では、

上記の6主体が身近な地域社会(コミュニティ)の可能性を最大限に引き出す すべての人に安心と安全を保障し、希望と幸せを実感できる社会をめざす 地方こそ成長の主役であり、「日本創生」の原点である 食料システムの確立、農林水産業の発展、「海業」の全国展開を行う 地域づくりは人づくりである

などが網羅されていた。

主体とされた「産官学金労言」の責任は大きい

いずれも10年前からの地方創生としての「まち、ひと、しごと」の定義に包摂される項目である。とりわけ、6主体が明瞭に書き込まれていて、従来の「反対のための反対」や「これから注目したい」といったレベルの言説では、主役の座を維持できないようになっている。

独自の目標を掲げて、その利用できる資源を明記して、わが地方を誰がどうするのかを具体的に示すことが、主体と見なされた「産官学金労言」には求められたのである。