※ A:将来世代の負担 B:政府支出の現在価値 D:公的債務 V:潜在的債務 T:現在世代が支払う税収の現在価値となる(コトリコフとバーンズ、2004=2005:83)。
このうち「将来世代の負担」を軽くするには、Bを増やすか減らすか、DとVをいかに減らすか、Tを増やせるのかなどの議論が肝要なので、(2)もまた政治家の心得として考えておきたい。
さらに、T(現在世代が支払う税収の現在価値)においては、T1(若い世代)とT2(高齢世代)間の負担の在り方にも意見の幅があるので、政治家としての一定の判断力が求められる。
「固い板」に穴をあけるのは容易ではない政党を問わず国政に携わる政治家として生きたいのならば、上記の(1)(2)については現状を学び、その処方箋を自らの言葉でまとめておきたい。
ただそうしても、内憂外患こもごもの日本社会では、内政にも外交にもたくさんの課題があり、加えてそれらが交差しているから、「固い板」は簡単には穴をあけられないことに直面するはずである。
「固い板」の根底にある人口構造しかし、内政に関して言えば、複雑に絡み合って交差している根元には人口構造がある。
そこでは、毎年の出生数が落ち込み、合計特殊出生率が低下してきて、「年少人口」の漸減が普通になった少子化、および団塊世代の全員が「後期高齢者になる」2025年の後では高齢化率3割超えの時代が到来し、しばらくこの傾向が続くと予想される人口変容が待っている。
「新しい資本主義」との連結岸田前内閣の時に私も「新しい資本主義」の「その先」論に取り組み、3年がかりで『社会資本主義』(ミネルヴァ書房、2023年)を刊行して、変化しつつある資本主義論に加えて、人口変容とエネルギーミックス問題を論じた。
具体的には、「新しい資本主義」として「生活の質」を支える「社会的共通資本」と災害予防のための治山治水を優先し、国民が持つ「社会関係資本」を豊かにすることで助け合いや相互扶助の文化を育てる。合わせて「こどもまんなか」の政策により、義務教育・高等教育を通じて知識、価値意識、科学への態度などを含む一人一人の「人間文化資本」を育てることを強調した(図1)。