アラビア語の中での生活
最初に困ったことは、意思の疎通でした。ホダは英語とアラビア語を話すのですが、家族はみんなアラビア語だけです。
私はアラビア語など知るはずもなく、日本語と少しの英語しかわかりません。そして、まわりに日本語を話す人は誰一人としていませんでした。
私は観光ビザで来ていたので、働くことも学校に行くこともせず、ホダが仕事に出て帰宅するまでの間、日中はずっと英語の通じない家族と一緒に過ごしていました。
とにかく言いたいことも言えないし、言ってることもまるでわからない・・・。
しかし何度も自分に言い聞かせていました。「今回の目的はホームステイなんだから」「通じなくて当たり前」と。
それでまず、少しでもアラビア語を理解できるように努めようとしました。
いつも一緒にいたホダのお姉さんとその子供達に「あれは何ていうの?」「これは何て言うの?」と聞いていき、ノートにカタカナで単語を書いて口に出して覚えるようにしていったのです。
相手の言っていることがわからないときは、時にはその文章をまるごとカタカナでメモをし、ホダが帰宅してからそれを読んで、英語に訳してもらったりもしました。
そういうふうにして少しでも単語が通じると、ものすごくうれしくて、それで何度も何度も周りの人に自分から言葉を発していくようになりました。
<いつも一緒に遊んでくれたホダの姪っ子ちゃん達。私のアラビア語の先生でもあります。よく家の中でベリーダンスを踊ってくれていました>
寒いお風呂
言葉の次に困ったのはお風呂でした。ホダに「ここはハンマームよ。トイレットね。そしてここで体を洗うのよ」と案内された所が、穴が1コあるだけの場所でした。
よく見ると壁の下の方に水道の蛇口があり、小さな柄杓(ひしゃく)が一つ置かれていました・・ここがトイレ兼お風呂だという。
・・・マジ?・・・トイレはわかる。でも「体を洗う」ってどうやって?シャワーもないしもちろんバスタブもない・・・(もう一ついうと、トイレットペーパーもありません)
ホダはニコニコしながら金だらいを持ってきて、教えてくれました。
「ここに水を入れてコンロの上に置いて、お湯を作るの。それをハンマームに持っていって体を洗うのに使うのよ。」いわゆる、行水でした。
冬だったので夜は気温が下がり、寒いお風呂は慣れるまで苦痛でした。
想像してみてください。冬の行水は寒くて寒くてたまりません。お風呂に入って出るまでの間、私はずっと鳥肌状態でした。
ですが幸い砂漠気候ということもあり、汗をかくことも無かったので、私は毎日お風呂に入らなくても平気だったのです。
それで、今日は体を洗う日、次の日は(服を着たまま)髪の毛を洗う日というように一日おきに洗っていました。
とにかくそれほど寒かったのです。お風呂から出た後、私はいつも急いで「バブーン」の前に直行していました。
<これがバブーンで、ガスコンロのようなもの。寒い時いつも、お母さんが私の部屋にこれをもってきてくれました。炎がむき出しで時には火事の原因にもなるそうです...>