ボロさでは、前述した2つのスタジアムと比べても別格である。スタンドのメンテナンスなどしていないかのような有り様だ。スタンドもほとんどが仮設で、塗装もはがれている状態。仮に、同じようなスタジアムが日本にあったとしても、耐震補強は無きに等しく使用許可は下りないであろう。
しかし、同スタジアムの魅力は、そのロケーションだ。メインスタンドのほぼ目の前といっても差し支えない場所に、イタリアを代表する観光スポットの1つであるコモ湖があり、観戦客が試合前後に湖畔で一服したり、エスプレッソを嗜みながら仲間と談笑する姿が見られるのだ。もうこれだけで贅沢なひと時を満喫でき、目的がサッカー観戦であることすら忘れてしまうほどだ。
コモはこの2002/03シーズン17位に終わり、セリエBに降格。その後、3年連続降格という憂き目に遭い、2005/06シーズンにはセリエD・ジローネB(実質4部)にまで落ちた上に財政破綻してしまう。
しかし、2019年、資産6兆円超と言われるインドネシアで最も裕福な実業家のマイケル・ハルトノ氏と、その弟ロバート・ハルトノ氏に買収されたことでV字回復する。2023/24シーズンのセリエBで2位となり、22シーズンぶりにセリエAの舞台に帰ってきた。
そして、元スペイン代表のレジェンドMFであると同時に、コモOBで、同クラブで指導歴を重ねたセスク・ファブレガス氏を新監督に据え、今2024/25シーズン7節終了時点で2勝3敗2分けの14位ながら、9月25日の5節では昨季のUEFAヨーロッパリーグ王者のアタランタを3-2で破るなど、攻撃的サッカーでサポーターを魅了している。
コモはミラノから電車で約40分。日程さえ合えば、ミラノで行われるナイター試合とのハシゴ観戦も可能だ。実際に筆者も、デイゲームだったコモ対レッジーナの後、サンシーロでのインテル対キエーヴォ・ヴェローナ(2-1でインテル勝利)を観戦した。イタリア北部にチームが集中しているセリエAだが、こんなメリットもある。