これによって、10本近くの支柱が建てられているバックスタンドの後方から観戦すると、見切れ席が生まれることになり、場合によっては選手が放ったシュートが“消える”ことになるのだ。加えて可能な限り屋根が低く造られているため、ロングボールの蹴り合いとなると、その度に“消えるボール”を探すことになる。

しかし、メガクラブが集い、巨大スタジアムの多いロンドンの中で、最もピッチとスタンドが近いのが同スタジアムだ。移転新築計画が発表される度、サポーターの反対に遭い、今では計画そのものが白紙となっている。

2001/02シーズンの、UEFAインタートトカップ(現在は消滅)優勝という国際タイトルを持ち、2022/23から2シーズン連続でプレミアリーグ残留を果たしているフラム。今2024/25シーズンは、7節終了時点で3勝2敗2分けの8位と、まずまずの序盤戦を送っている。

NFLのジャクソンビル・ジャガーズや、新日本プロレスの元エース、オカダ・カズチカが所属している米プロレス団体AEWを所有する米国人実業家のシャヒド・カーン氏の資金力のお陰で、着々と力を付けつつある。そしてその躍進を陰で支えているのは、この古いスタジアムを愛してやまないサポーターなのだ。


スタディオ・ジュゼッペ・シニガーリャ 写真:Getty Images

スタディオ・ジュゼッペ・シニガーリャ

場所:イタリア、コモ
使用クラブ:コモ1907(セリエA)

筆者がスタディオ・ジュゼッペ・シニガーリャを訪れたのは、元日本代表MF中村俊輔(現横浜FCトップチームコーチ)が、セリエAのレッジーナに移籍した直後の2002年9月29日のコモ戦(1-1)だ。

当時は当然スマホもグーグルマップもなく、「行けば何とかなる」とばかりに電車に乗り込んだ。コモ湖(Como Lago)駅から歩くこと15分ほどで到着。しかし、そこにあったのは「練習場か?」と疑いたくなるような安普請なスタジアムだった。