ラピダスは何をつくるのか
そもそも筆者は、ラピダスが2nmの先端ロジック半導体を量産できると思っていない。その詳細は拙著記事『ラピダス、税金から補助金5兆円投入に疑問…半導体量産もTSMCとの競合も困難』(2023年7月6日)、『社員200人のラピダス、2nm半導体の量産は困難な理由…TSMCは7万人以上』(2023年9月8日)などで論じた。
しかしここでは、一万歩譲ってラピダスが2nmをつくれるようになったと仮定して、それで何をつくるのかということを論じたい。ラピダスは2023年11月13日、2023年度内に米シリコンバレーに営業拠点を設置することを表明した。ラピダスの小池社長は「米国は顧客となる企業が多い。事業をグローバルに展開したい」と開設の狙いを語ったという(2023年11月14日付日経新聞)。そして、その2日後の11月16日、ラピダスは人工知能(AI)向け半導体を設計・開発するカナダの新興企業のテンストレントと提携すると発表した。同日、米シリコンバレーで業務提携に関する覚書の調印式を開き、ラピダスの小池社長は「テンストレントが当社の最初の顧客になることを期待する」と語ったという(2023年11月17日付日経新聞)。
どうもラピダスは、北海道の千歳工場で北米向けの半導体を生産したいようだ。日本政府は3300億円に加えて、5兆円とも10兆円ともいわれる補助金を投入するにもかかわらず、日本向けの半導体をつくるのではなく、よその国の半導体をつくろうとしている。これには筆者は、到底納得することができない。なぜ、よその国の半導体をつくる企業に、巨額の国費を投じるのか。