他にも、細胞に与える餌と細胞が生成する廃棄物、最終的にできあがる製品の風味や食感などさまざまなデータを集めてデータベース化します。これらのデータを利用して、コンピュータ内でデジタルツインを構築してシミュレーションを行うことが目的です。

コンピュータ内で異なる条件をシミュレートして機械学習技術を使用すれば、より良い風味の培養シーフードの生産の条件を探索して、生産プロセスを最適化できます。

この方法だと、研究室で何度も実物を作らずに生産をシミュレートでき、長期的には生産の自動化に寄与します。なぜなら、生産過程のさまざまな問題をコンピュータ上で予測し、それぞれの問題に対する最適な解決方法をあらかじめ把握できるため、実際の生産をより安定的に管理できるようになるからです。

ラボの様子(Umami Bioworks提供)

世界中で広がる培養肉市場

このように培養肉において中核的な技術を築いているUmami Bioworksの成長は著しく、今では注目の企業となっている。

今年の3月には、エビ、カニ、ロブスターなどの甲殻類の培養肉の研究を行うShiok Meatsとの合併を発表した。Shiok Meatsは、3,000万ドルもの資金調達を実施した業界を代表する企業だ。

なおUmami Bioworksは昨年、日本のマルハニチロとの協業を発表している。最後に日本企業についてMihir氏に話を伺った。

――マルハニチロとの協業をされたそうですが、日本企業にはどういった強みを持っていると思いますか?

Mihir:開発から流通に至るまでほぼすべてに手を広げていることに、日本企業の大きな強みがあります。ほとんどの国では、開発と流通の間でのパートナーシップを管理できる企業を見つける必要がありますが、明らかに、2つのパートナーシップを管理することは1つを管理するより難しいでしょう。

これらの大企業の利点は、培養食品を支援したい場合、市場を作れることにあります。ビジネスに参入し、それを現実化したい場合、彼らはほぼ独力でそれを行えるのです。さらに、彼らはグローバルな市場を持つため、すばやく世界中に流通させることができます。