ウナギやドジョウなどの魚が食べられなくなる日が来るかもしれない。2020年に環境省が公表した「環境省レッドリスト2020」では、ニホンウナギが絶滅危惧種に、ドジョウが準絶滅危惧に指定された。
一方で近年、水産食品の世界的な需要は増加傾向にあり、2050年までにほぼ倍増すると予測されている。こうしたニーズの高まりに伴う消費量の増加により、魚類の減少は悪化の一途を辿っている。
そんな絶命の危機にさらされる魚類を救い、持続可能な水産業の構築を目指すのが本稿で取り上げるUmami Bioworksだ。
シンガポールで2020年に設立されたUmami Bioworksは、細胞培養技術を用いた魚肉「培養シーフード」を研究・開発している。今回、同社の創業者でCEOのMihir Pershad氏を取材したところ、Mihir氏は学生時代には友人とNPOの設立と運営、さらにはスタートアップスタジオ「Early Charm Ventures」での勤務経験があるという。
スタートアップスタジオでは、大学の研究を調査して事業化の可能性を見出し、その研究に基づいた事業構築の手助けまでを行った。長年ビジネスを築いてきた人々から学べるスタジオでの仕事は、貴重な経験だったとMihir氏は語る。研究開発を事業化につなげることへの幅広い知見を、スタジオで培ったのだ。
需要が高く、かつ絶滅危惧の魚種に焦点
消費者からの需要が高く、なおかつ絶滅危惧に指定される魚種に焦点を当てて同社は事業展開している。これには、クロマグロ、ニホンウナギ、タイセイヨウダラなどの魚種が含まれる。まずは同社の事業内容である培養シーフードについて話を伺った。
―― なぜ今、培養シーフードが重要なのですか?
Mihir:2020年から2050年にかけて、シーフードの需要は倍増することが予測されます。しかし、魚の養殖をコスト効率よく行うことは簡単ではありません。