佐野社長と原氏をクラブ首脳として名前を残したのは、“Jクラブ経営1年生”であるレッドブル側が、日本でのクラブ運営のノウハウを、両氏から引き継ぐ側面もあるだろうが、いきなり経営陣をレッドブル一色で固めることによる“乗っ取り感”を避けたい思惑も見え隠れする。

電電関東サッカー部を前身とし、1969年に創立された半世紀以上の歴史ある同クラブを、世界を席巻するマルチクラブオーナーシップの最先端を行くレッドブルが買収したニュースは驚きとともに伝えられた。大宮サポーターは長年、社長が交代する度に、NTT東日本からの“天下り人事”に辟易していたこともあってか、喜びと期待に包まれた。


RBライプツィヒ 写真:Getty Images

世界で8クラブ目、レッドブル運営への期待

レッドブルは、2005年にオーストリアのザルツブルクを買収したことを皮切りに、ドイツ1部ブンデスリーガのRBライプツィヒ、米メジャーリーグサッカーのニューヨーク・レッドブルズ、オーストリア2部に在籍するザルツブルクのセカンドチーム、FCリーフェリング、ブラジル1部のレッドブル・ブラガンチーノとそのセカンドチームのレッドブル・ブラジル、2008年に創立されたが2014年に解散したガーナ1部のレッドブル・ガーナを所有。大宮は世界で8クラブ目のレッドブル所有クラブとなる。

2020年のJリーグ規約改正で、外資系企業が日本法人を設立せずに買収できることになって以降、この規定が適用された例は初めてだ。J3を圧倒的な強さで駆け抜けつつあるとあって、サポーターは当然ながら、“レッドブルマネー”とクラブ運営の手腕に期待しているだろう。中には2年連続昇格で、一気にJ1入りを夢見ているサポーターもいるのではないだろうか。

そんな期待を感じ取ったのか、10月12日の記者会見で、ゴメスTDは「2025年は新体制への移行期間」「3~4年でJ1昇格」「2030年を目途にタイトル争い、並びにACLエリート出場」を目標とし、同時に「大宮アルディージャが築いてきたものをリスペストする」と語り、大風呂敷を広げることはなかった。