■ローマ第9軍団の集団失踪

 紀元前65年に創設されたといわれているローマ第9軍団もまた、忽然と姿を消してしまった集団のひとつとして知られている。数あるローマ軍のなかでも、高度に訓練された最強の精鋭部隊として知られた第9軍団は、当時アフリカ、ドイツ、スペイン、イギリス、バルカン諸国など各地で活躍し、その強さと名声を鳴り響かせていた。

 そして紀元2世紀、スコットランドからの攻撃に対抗するためにローマ第9軍団は前線へと出陣する。神秘的なシャーマンが古代ケルトの神に捧げるドラムを叩くなか、原始的なフェイスペイントに裸のままクマや狼の毛皮をまとい、狂ったように暴れる野蛮な戦士たちの集団ともいえるスコットランド軍を相手に、第9軍団は苦戦を強いられてはいたが勇敢に前線を北へ伸ばしていた。

 しかしその進撃の途上で、ローマ第9軍団は突然その消息を絶ってしまったのである。民間人の集団ではなく、当時世界一といわれた数千人の部隊が、まるごと消えてしまった。1954年に出版され、映画化もされた『第9軍団のワシ』をはじめ、この集団失踪に関してさまざまな出版物や映像によって話題にされてきたが、いまだに決定的な結論に至ってはいない。