原因や理由もなく、人間は消えてなくなりはしないものである。しかし記録をたどっていくと、歴史上には数々の集団失踪事件が残されている。中には奇怪そのものとしかいいようがない、原因も理由も方法も謎のままの事件もある。ここで、いくつかの奇怪な集団失踪事件を見てみよう。

■村人全員が消失したイヌイットの村

 20世紀に入ってからの集団失踪として知られているカナダ北部のイヌイット居住区での事件である。1930年の11月のことである。吹雪に襲われた毛皮のトレーダーのジョー・ラベルはカナダ北部のアンジクニ湖近くにあるイヌイットの村へ避難のために立ち寄った。

 その村は、イヌイットの村としては比較的裕福で人口1200人~2500人ほどであったという。しかし、そこで彼が見つけたものは、人一人いない村だったのである。彼は、村中を探し回るが、見つけたものは餓死して凍結した7匹の犬だけだった。カヤックも残されており、湖を渡ったとも考えられない。村の家は荒らされた様子もなく、イヌイットにとっては命綱ともいえるライフル銃などもそのままにされていたとのこと。食料品なども残されており、料理が置かれたままのデーブルなどもあったという。

 すぐにカナダ王室騎馬警察隊(RCMP)へ報告され、その後の調査においても村人は一人も発見されることなく、奇怪なことに最近掘り起こされた可能性が高い墓が数個確認されただけであった。