【不動産支援】 ・既存の住宅ローン金利を平均で0.5%引き下げ ・2軒目の住宅購入時の頭金比率の下限を25%から15%に引き下げ ・売れ残っている住宅取得に向け中国人民銀が支援拡大

【株式市場支援】 ・政府系ファンド、中国投資(CIC)傘下の中央匯金投資(匯金)による上場投資信託(ETF)などの保有増を引き続き支援。新たな政府系ファンド組成も検討 ・機関投資家による株式投資や企業の自社株買い資金の調達を支援 ・企業のM&A(合併・買収)を推進する新たな施策を近く発表へ ・主要な商業銀行の中核的自己資本(普通株式等Tier1資本)を増強へ

とのことである。

金融緩和が打ち出されるタイミングは、今にしてみれば予見不可能だったわけではない。ポイントの一つは9月FOMCでFedが長い利下げサイクルについに入ったということである。Fedの利下げサイクルが始まるまで、中国人民銀行の金融緩和は封じられてきた。金利差拡大が招く人民元の対米ドルの下落は国威を傷付けるためである。

中国に限ったことではないが、米ドルの高金利に釣られたキャピタルフライトが今後怖くなくなると確信できれば、金融緩和の余地が出てくるというわけである。

もう一つは、経済成長の減速を容認してきた政権に方向転換を迫るのはいつも大規模な治安悪化である。2008年のグローバル金融危機を受けた景気悪化では職を失ったり賃金未払いに遭った労働者による労働争議が多発したのが4兆元という大規模な財政出動の背景になった。

2022年ゼロコロナ政策の転換も全国の広範囲な抗議運動をきっかけになし崩しに実行された。今回も抗議運動こそは目立たなかったものの、全国各地で経済的に破綻した人々による通り魔や、官僚個人を標的とした殺傷事件が多発した。

この国の治安が完全に崩壊するのではないか、と怖くなるタイミングこそ、経済対策が出る夜明け前の暗さなのである。