DVDやCDなどの圧倒的な品揃え・在庫数を誇っていた「SHIBUYA TSUTAYA(渋谷ツタヤ)」。全店改装して今年4月にリニューアルオープンしたが、改装前を知る人のなかには、店内を埋め尽くしていたDVDやCD、書籍などがなくなり、大きく様変わりした光景に驚きとショックを受ける人も少なくないようだ。大手レンタルショップ・書籍販売店だったSHIBUYA TSUTAYAでは、なぜ“モノ”が大幅に減ったのか。そして、SHIBUYA TSUTAYAはいったい何で稼いでいるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
SHIBUYA TSUTAYA(運営元:カルチュア・コンビニエンス・クラブ<CCC>)がオープンしたのは1999年。改装前は地下1~2Fがコミック・トレカ・ゲーム販売、1~2FがDVD・CD販売、3~5FがDVD・CDレンタル、6Fが書籍販売、7Fがカフェ、8Fがイベントホールとなっていた。その在庫数は全国のTSUTAYAのなかで最大であり、音楽タイトルは約35万枚、映像タイトルは約20万本にもおよんだ。その魅力はタイトルの本数だけではなく、選定の秀逸さにもあった。例えば映画コーナーには手に入りにくい貴重なクラシック映画など古い作品やレアな作品も揃えられ、映画ファン待望の未DVD化映像作品を含む約6000タイトルを取り揃えたビデオテープコーナー『渋谷フィルムコレクション』なども展開。CDコーナーにも各アーティストの古いアルバムから洋楽、ニューミュージック、演歌、民族音楽、落語まで幅広いジャンルのタイトルが取り揃えられていた。
集客力の衰えが顕著になり全店改装
映画業界関係者はいう。
「20年以上前、大きなレンタルショップがない地方から大学進学に伴い上京してきて、初めて渋谷ツタヤに足を踏み入れたときの感動は忘れない。映画好きの先輩や同級生から薦められた古い映画を借りるため、毎週のように渋谷ツタヤに通っていた。うろ覚えだが、レンタルCDコーナーには効果音などのCDもたくさんあり、当時はまだプロの映像関係の人なんかも深夜にそうしたCDを大量に借りに来ていた気がする。ここ数年は渋谷ツタヤに限らずレンタルショップには行っていないが、私のように映画業界に身を置く人間ですら行かなくなったということは、やはり客は減っているのかもしれない」(2023年8月10日付当サイト記事より)
「音楽でも映像でもまだネット配信サービスが普及していなかった2000年代、SHIBUYA TSUTAYAは若者のみならず幅広い年齢層の客を集め、金曜夜や土曜の午後には横にずらりと並んだレジの前に長蛇の列ができる光景がみられた」(小売業界関係者/同)
だが、動画配信サービスや音楽のサブスクリプションサービスの普及に伴い、10年代後半に入ってからは集客力の衰えが顕著になり、そこにコロナ禍が重なり、大きな方針転換の必要に迫られることに。全店改装のため、昨年10月31日からは一時休業に入った。
ちなみに改装前の23年8月、CCCは当サイトの取材に対し、リニューアル後の店舗について次のように説明していた。
「新しい『SHIBUYA TSUTAYA』では、国内のみならず海外から多くの観光客が訪れる世界的観光地・渋谷の一等地に、世界中のIPによって、365日、全ての人が夢中になれるコンテンツやイベントを展開予定です。また、これからの『個人の時代』にあわせて、500席を有するインスパイアされるカフェ&ラウンジの空間を提供する予定です。SHIBUYA TSUTAYAでしか出会えない体験を味わえるような、新しい店舗として新しく生まれ変わるので、ご期待下さい」(23年8月10日付当サイト記事より)