投機化は日々の株価の変動幅の大きさに現れる。
たった一日である企業の業績が変動するわけはない。『The NEXT』の第7章に述べた株価第一原則は一日では作用しない。同じことが、ある程度、金利についても言える。
金利は一日でも変動するが、朝と晩で大きく変わるということはない。だから短期的な大変動の要因は他に求めなければならないが、それが投機である。それは信用制度を最大限に利用し、世界を舞台にして、さらに時間軸に乗って展開している。8月5日の暴落は、これを抜きにしては語れない。
日経VI一日の株価の変動を伝える指標がボラティリティー・インデックス(VI)である。その動きを示したのが図4である。
これをみると8月5日の暴落の時、大きな変化が生じたことがわかる。VIの値は、20(これが標準と言われている)から段差をつけて変化した。現在(本稿執筆の10月4日時点)は25近辺だが、この値は証券業界の経験と常識から見ても投機的水準なのである。
“名もなき暴落”以来、日経平均株価の一日の変動幅が1,000円を超える日が珍しくない。常態化と言っても良いくらいである。こういう危うい市場にNISAを通じて小口の投資家が近づくのはどうか。素人には向かない。プロでさえ振り落とされる構造が露出している。つまりは株式市場の投機化が進行している。
投機の熱に煽られて“株が上がればええじゃないか”が声高になるが、それは資本主義の繁栄を示しているものでもなく、私達の将来の経済社会のあり方を示しているものでもない。むしろ末期の様相なのである。
【追記】 前回予告した地域金融機関の分析は延期した。石破発言からの展開があったことも理由のひとつだが、分析対象が広く、解析にやや時間がかかっている。