なぜこんなことになったのか。隈氏は「保護塗料の性能が、現在のものより低かった」という。建築エコノミスト森山高至氏は、この見解に否定的だ。そもそも「杉」を使うべきではなかったという。

「直接雨風にさらされるところに杉を使っている点が問題。本来であれば油分の多く雨に強い木材を使うべき」

隈研吾の建築が「青カビと腐食でボロボロ」「建築家の仕事とは思えない」…!地元住民も首をかしげる名建築家の「致命的なトラブル」 | マネー現代 2024.09.30

現在、那珂川町はふるさと納税サイト(クラウドファンディング)で補修費として1千万円の寄付を募っている。同サイトには、隈氏のメッセージも掲載されている。しかし、終了まで3週間を切った現在(執筆時 10月8日)でも達成率は11.9%と、あまり芳しくはない。

隈研吾のプロダクトデザイン

「馬頭広重美術館」の屋根は木造ではない。杉のルーバーの下には雨を受ける鋼板屋根がある。代表作「新国立競技場」も木造ではない。全体は鉄骨造であり、木造に見える屋根も鉄と木のハイブリッドだ。木はあくまで「飾り」なのだ。

今回の空気清浄機も同様だ。外装が木で組まれているだけであり、内部は金属・樹脂・プラスチックでできた普通の家電製品である。

「なぜ木を使ったのか?」

木で得られる安らぎ。木目の美しさ。経年による味わい等々。公式サイトに書かれているのは、外観から生じるもの。すなわち装飾効果だ。隈氏のプロダクトデザインは、機能デザインというよりも装飾デザイン、と言える。

ジェームズ・ダイソンのプロダクトデザイン

対極にあるのがジェームズ・ダイソン氏のプロダクトデザインである。

ダイソンの掃除機は透明だ。「なぜ透明なのか?」。ゴミを見せたいからだ。こんな逸話がある。