なぜこんなことになってしまったかというと、AEMOが四半期ごとに報告しているリポートに同じ季節の全燃料別の発電量が出ていました(図3)。

図3 2023年9月16日のサウスオーストラリア州の総需要と燃料別の発電量AEMO Quarterly Energy Dynamics Q3 2023

2023年9月16日のサウスオーストラリア州の総需要と燃料別の発電量のグラフを示します。NEM全体のグラフではありませんが、時差がほとんどないため、図2と比較して問題なでしょう。

燃料種別に日本語訳を記入してあります。実際の総需要が黒い点線で表されています。肌色で示した「dPV」と表された部分は、個人宅の屋根に設置された太陽光発電の出力です。図2ではRooftopと記載された部分に相当します。13時くらいを最大値にして発電量の大部分を占めています。

オレンジ色の「Grid Solar」の部分はメガソーラーです。少々見づらいですが、朝の9:00ころと夕方の16:00ころが出力のピークになっており、12:00~14:00ころが極小点になっています。図2の赤い部分と同じ傾向を表しています。

図2をよく見ると、なぜ図1のメガソーラーがこんな形になっているのか、わかりやすいと思います。抑制できない個人宅の太陽光発電の出力が多きくなりすぎて、バッテリーでの蓄電、連系線を使っての他地域への融通を行っても余ってしまってメガソーラーを徹底的に抑制しないと需給バランスがとれなくなってしまったということです。

日本も東京都のように新築住宅に太陽光発電を義務化、なんてやっていると近い将来このように大量の無駄なメガーソーラーが発生してしまうと思います。

ちなみに、オーストラリアの総需要カーブを見ると、日本の総需要カーブと異なる点が1つあります。それは実際の総需要を「Underlying demand=基礎的な需要」と表現して、そこから個人宅の太陽光発電量を差し引いた部分を黒い実線で表して「Operational demand」としています。これは個人宅の太陽光発電量は出力抑制制御ができませんから、それを差し引いた需要をそれ以外の制御可能な電源を組み合わせて供給します。なので、黒い実線を「Operational=需給調整を行う需要」と表してみました。