このことから研究チームは「ムネミオプシス・レイディは互いの体を融合させる能力を持っているのではないか」との仮説を立て、実験を開始することに。

まず20匹のムネミオプシス・レイディを用意し、体の組織の一部をスライスして切り取ります。

次に2匹のペアを計10組作り、そのペアごとに同じ水槽内に入れて一晩寝かせてみました。

すると翌日、非常に驚くべきことに、10組中9組のペアが互いの体をくっつけて1匹になっていたのです。

驚きはそれだけに留まりません。

そのプロセスをよくよく観察してみると、傷ついた2匹の個体はわずか数時間で互いにくっつき、最初はそれぞれの体が独立して動いていましたが、2時間後には動きが完全に同期するようになったのです。

こちらは片側の個体を突っつくと、反対側の個体も反応することを示した動画になります。

※ 音声はありません。

この映像から分かるように、彼らは合体後、互いの神経系までも融合させて完全に1匹の個体として動けるようになっていたのです。

さらに神経系だけでなく、2匹の消化器官も融合しており、餌を片側の個体に与えると、餌が隣の個体の消化器官にも運ばれて、2匹とものお尻から消化されたウンチが排泄されたのです。

合体から2時間後には全身の筋収縮の95%がシンクロするようになっていたといいます。

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神経系や消化器官まで融合する / Credit: Jokura et al., Current Biology(2024)

では、若返りの秘術を持つムネミオプシス・レイディが「再生」ではなく「合体」を選んだのはなぜでしょう?

それについて研究者らは「傷ついた2匹が互いに融合する方が、1匹の再生に比べて損傷からの回復がはるかに早くなることが要因でしょう」と指摘します。

ケガをした個体が幼生に戻って、そこから再び成体となるには少なくとも数週間はかかります。

しかし仲間同士の合体であれば、わずか数時間で済むのです。