匿名どころか文書作成者と文書入手先との接点が無い事案であり、にもかかわらず証拠書類の添付が一切無く、裏付けとなる第三者の証言の記載も無いため、(伝聞情報も情報源不明なものばかり)文書作成者に聞かなければ調査不可能な事項ばかりです。

そして、文書全体を通して虚偽と思われる内容、具体的な違法行為が書かれていないものにとどまらず、誹謗中傷文言など公益通報とは無関係な記述が存在していると言えます。

小括すると、通報者・文書作成者の特定と事情聴取は必須であり、それが無い中での調査を強いられるならばコストが膨大になり現実的な運用が期待できないのではないでしょうか。

公益通報とそうではない内容が混在する文書の扱い:区分判断する判例の前提

ここで、「公益通報とそうではない内容が混在する文書の扱い」について。

既にこの記事で書いていますが改めて指摘します。

文書を配布したことを理由とする不利益取り扱いをする場面においては、原則は区分して判断するということで良いと思われます。

しかし、ある事案において区分して判断すべき前提があるのかどうか?については、その都度検討が必要だろうと言えます。

元朝日新聞記者の奥山俊宏氏が主張する徳島県が被告となった事案は(高松高判平成28年7月21日 平成27年行(コ)3号 )、以下のような状況でした。

昇任がかかる人事評価の際に、刑事告発をしたこと全体を消極的事情として考慮していた事案 刑事告発は弁護士が代理人として罰条を分けて警察に書類送付していた 告発内容は2つの罪となる事実が書かれており、その内の1つが公益通報に該当すると判断され、もう片方は真実相当性が無いとして公益通報には非該当と判断された(現行法以前は「公益通報」の要件に「真実相当性」が必要だった) ただ、非該当とされた部分を見ると、日時・場所・行為者・行為の概要まで具体的に記述されていたことや、「不正の目的」があるとは認められなかった事案

これに対して、兵庫県の事案は、当該文書を了知した際の文面の公益通報性判断の時点での扱いが問題になる事案であって、フェーズが異なると言えます。