しかしタンパク質が作られる主な装置群が存在するのは核の外側の領域です。

また細胞工場は命を維持するために、同時に何百個ものタンパク質を製造する必要があります。

一方で、核内に存在するDNAは基本的に1セットしか存在しません。

何百というタンパク質製造現場に、1セットしかないDNAが引っ張りだこになっては大変です。

そこで登場するのが「設計図の部分写し」となるRNAです。

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DNAは全体の設計図でRNA(mRNA)は設計図の部分写しとして機能しタンパク質製造現場に運ばれます/Credit:Canva . 川勝康弘

RNAはDANから必要とされるタンパク質の情報だけを写しとって、タンパク質が製造されている現場まで運ぶ役割を果たします。

こうすることでDNAを安全な核内に留めながら、無数の製造現場に必要となる種類と量を届けることができるのです。

まとめ

「DNAが全情報を含む設計図ならば、RNAは必要な部分の情報だけを写し取った設計図の部分写しである」

ここまでは、細胞工場の中でのDNA(設計図)とRNA(設計図の部分写し)の基本的な話を中心にしてきました。

ただ「基本的」という言葉どおり、全てがこの仕組みで上手くいくわけではありません。

その問題の1つが「いらなくなったRNA(設計図の部分写し)をどうするか?」というものです。

細胞工場も現実の工場と同じように、ある時期には特定のタンパク質の需要が高まり、別の時期には需要が低下することがあります。

そのため、需要に応じて大量に製造してしまったRNA(設計図の部分写し)が余ってしまうこともあるのです。

この余ってしまったRNAを放置しておくと、タンパク質製造の現場は必要がないタンパク質を製造し続けてしまいます。

タンパク質の製造現場は細胞全体の需要など気にせずに、とにかくRNA(設計図の部分写し)どおりにタンパク質を作り続けるのが仕事だからです。