そして「人生100年時代」が来ないという今回の結論は、それを元に考えられてきた保険や資産運用ビジネスの根幹を揺るがすものとなるでしょう。
結論として、「人類の平均寿命は限界に達したかもしれない」と言えます。
極端に長生きする人はいるものの、どんなに医療が進歩しても、人類が生物として達成可能な寿命の限界は、結局85歳前後なのかもしれません。
現代を生きる私たちは、なんとなくこの事実に気づいていたのではないでしょうか。
それゆえ近年では、「もっと長く生きたい」というよりも、「健康的で充実した生活を送りたい」と願う人が増えてきました。
オルシャンスキー氏も、「科学者は、ただ寿命を延ばすことではなく、健康に過ごせる年数を延ばすことに軸足を移すべきだ」と主張しています。
身体がほとんど動かない状態で何十年も生き、そこに数年を追加するのではなく、20代のような健康状態で40代まで過ごせるようにしたり、60代の健康状態で80歳まで過ごせるようにしたりすることが大切だというのです。
「もっと長く生きたい」という19世紀の人々の願いをある程度かなえた科学は、はたして今後、21世紀の私たちの願いもかなえてくれるでしょうか。
全ての画像を見る
参考文献
Despite medical advances, life expectancy gains are slowing
https://today.uic.edu/despite-medical-advances-life-expectancy-gains-are-slowing/
元論文
Implausibility of radical life extension in humans in the twenty-first century
https://doi.org/10.1038/s43587-024-00702-3