一例として、口座開設のための本人確認(KYC、Know Your Client)など、伝統的金融業界では1年近くもかかることがありますが、クリプト業界のペースから見たら遅すぎます。
かといって、アンチマネーロンダリング規制など、雑にはできない部分もあります。
伝統的金融と比べると、既存の暗号資産レンディングサービスには多くの問題がある!――具体的な商品のレベルで見ると、これまでの暗号資産運用商品は、伝統的金融業界から見ていかがでしょうか?
瀬戸口:さまざまな暗号資産取引所やその他事業者がレンディング(取引所や事業者が暗号資産を借り受け、その対価として賃借料を提供する)を提供していますが、カウンターパーティーリスクや利益相反の面で問題があります。
有名な暗号資産取引所であっても、どの国・地域にあって、どの国・地域の規制に服しているのか、よく分からない取引所も少なくありません。
そうすると、トラブルが発生した場合には、どの国のどういう規制に服しているのか分かりませんし、どの裁判所に訴え出ればよいかも分かりません。これでは、他人勘定での運用(預かった資産の運用)や上場企業のように説明責任の求められる会社では使えませんし、個人の運用だとしても透明性に欠けます。
――さきほど、「トラブルが発生した場合」と仰いましたが、そもそも暗号資産のレンディングサービスではトラブルが発生しやすいということもありますか?
瀬戸口:はい、暗号資産運用商品の仕組みは、伝統的金融と比べると未発達な面があると思います。
たとえば、投資信託の場合、投資家の資産を預かるカストディ業務の主体運用方針を決める主体は峻別されています。さらに取引のマッチングを行う取引所はその外にあります。峻別することによって、特定の人達が勝手なことをできない仕組みになっています。