そして空に巻き上げられた粉塵が分厚い黒雲を生み出し、風に運ばれて地球規模に広がることで、太陽光の遮断とそれに伴う気温の低下を招きます。
この暗黒の時代はその後30年以上も続いたとされています。
こうして当時地球に生息していた動植物種の最大75%が姿を消し、恐竜はほぼ全滅の状態となりました。
このように、チクシュルーブ衝突体が恐竜時代を終焉に導いた最大の要因であることは研究者たちの広く同意するところとなっています。
ところがヘリオット・ワット大学の研究チームは2022年に興味深い発見をしました。
西アフリカ・ギニア沖の海底下に隕石の衝突で生じたクレーターを見つけたのです。
これは研究者らによって「ナディール・クレーター(Nadir crater)」と呼ばれています。
さらにチームがクレーターの地層や堆積物の年代測定をした結果、チクシュルーブ衝突体と同じ約6600万年前の白亜紀末に形成されたものと判明したのです。
つまり、恐竜時代を襲った隕石は2つあったことになります。
ただこれまでのところ、ナディール・クレーターを作った隕石がどれほどの威力を持っていたかは不明でした。
そこでチームは今回、ナディール・クレーターを詳しく調べ、隕石落下の瞬間に起きたことを解き明かしています。
もう一つの隕石はどれほどの威力があったのか?
本調査では隕石衝突時の詳細を理解するため、3次元地震探査(3D seismic imaging)という技術を使ってナディール・クレーターの画像化を行いました。
3次元地震探査は、人工的に発生させた音波が地下の層を通過する際、異なる地層や物質によって音波の反射の仕方が変わる性質を利用して、地下構造を立体的に可視化する技術です。