米経済・金融TV局のCNBCに出演したブルッキングス研究所のシニアフェローは、NFPの増加幅について今回は失業率が低下したものの「失業率が上昇も低下しない中立的な水準に近い」との見方を寄せました。また、ヌビーンのCIOを始め一連のエコノミストはインフレ率が鈍化トレンドにあり、米企業の採用活動の減速で確認できるように、米労働市場は鈍化過程を維持していると指摘。そもそも、9月FOMC後の会見でパウエルFRB議長が金融政策の「再調整(recalibration)」に入ったと発言しており、利下げ方向を変えるものではないとの意見が大勢を占めました。平均時給の伸びも、賃金インフレを懸念するほどでもないと一蹴していたものです。10月1日から3日まで続いた米港湾ストライキの影響について、ゴールドマン・サックスのチーフ・エコノミストのヤン・ハチウスは「米10月雇用統計のサンプル週を含まなかった」とコメントしつつ、正常化に時間を要するとして情勢を判断するのは時期尚早と結んでいました。

全体的に、ポジティブな内容が目立つため、米大統領選を控え民主党大統領候補のハリス氏に追い風になると考えられます。その反面、①年末商戦前ながら小売の雇用が急増せず、輸送・倉庫は減少し、裁量的支出の低下を示唆か、②長期失業者の割合が上昇、③完全失業者の水準が高止まり――を確認。加えて、今後はボーイングや米港湾ストライキ、ハリケーン「へリーン」の影響が出てくるだけに、しばらく波乱含みとなりそうです。

以下は、今回の雇用統計の詳細。

〇非農業部門就労者数

米9月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比25.4万人増となり、市場予想の14万人増を上回った。前月の8.9万人増(11.4万人増から下方修正)からも改善し、4カ月ぶりに20万人台へ戻した。

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比22.3万人増と市場予想の12.5万人増を上回った。前月の11.4万人増(11.8万人増から下方修正)からは、改善。民間サービス業は20.2万人増と、前月の10.9万人増(10.8万人増から上方修正)を上回った。