「最近の為替動向も踏まえますと、年初以降の為替円安に伴う輸入物価上昇を受けた物価上振れリスクは相応に減少しているとみています。従って、政策判断に当たって、先ほど来申し上げてきたような点を確認していく時間的な余裕はあると考えています」
「7月に向けての円安の動きが、もう一度、若干なりとも「第一の力」を上向きの方向に持ち上げる可能性があったというところかと思います。ただそのリスクは、先ほど来申し上げているように、相応に低下したということです」
「米国経済を中心とする世界経済の不透明感、あるいはそれを映じた金融資本市場の動きが今後の見通しに不透明感を与えています。それを総合すると、直ちに見通しの確度が高まった、従ってすぐ利上げだということにはならないというふうに考えています」
あまりにも金融政策が為替次第な印象が強くなりすぎたため、もはや為替を金融政策の目的にしてはどうかという自棄っぱちな質問が飛び交った。もちろん植田総裁はそれを否定しなければならない。
「ただし、私どもの考え方は一貫して、為替に直接反応するんではなくて、物価見通しに与える影響を通じて反応するということであります」
「例えば、完全に対米ドルで円を安定化させようとした場合には、単純な解決方法は日本の金利はアメリカの金利と全く同じにするという政策になります。すると、5%前後の短期金利、それで物価が安定化できるかという問題になってくるかと思います」
この議論は必ずしも正確ではなく、経常黒字国と経常赤字国の為替レートを安定させるのに——韓国程度の「連動」は必要だろうが——必ずしも政策金利が同一である必要はない。これは些末な議論であり、いずれにしろ、利上げの進行は米国の減速がソフトランディングかどうかによって大きく影響される。そういう意味でFedの50bp利下げは明らかに日銀の米国ソフトランディングへの確信を揺らがせた。
恐らく、確定している利下げ幅が75bpの調整利下げにとどまるのであれば、日銀の利上げパスは米国利下げの影響を受けなかっただろう。しかし初手から50bpもの利下げが実現してしまうと、さすがに一旦は立ち止まることになる。