また、2010年に、大阪地検特捜部が村木厚子氏を逮捕・起訴した事件で無罪判決が出され、その直後に、主任検察官による証拠改ざんが明らかになって、検察が世の中から厳しい批判を受けた際、法務省に設置された「検察の在り方検討会議」には、「検察に厳しい論者」の一人として加わり、取調べの可視化、特捜検察の組織の解体等について持論を展開した。同会議での提言を受け、検察改革の一環として出されたのが「検察の理念」である。
かかる意味において、検察OBの中では数少ない「検察批判論者」の筆者だが、袴田事件については、これまで独自の立場からの論評を行ってきた。
2014年に静岡地裁(村山浩昭裁判長)が出した再審開始決定が、即時抗告審での東京高裁(大島隆明裁判長)の決定で取り消された際には、【袴田事件再審開始の根拠とされた“本田鑑定”と「STAP細胞」との共通性】で同決定を支持する論評を行った。
その決定が最高裁で破棄差戻しとなり、東京高裁(大善文男裁判長)が、再審開始決定を出した際には、【「組織的証拠ねつ造」可能性認める袴田事件“再審開始決定”、検察の特別抗告は許されない】と題して、同決定での「捜査機関の証拠改ざんの認定」の背景と意味を解説し、検察官の特別抗告に対して消極の意見を述べた。
そして、上記大善決定に対して検察が特別抗告を断念して再審開始決定が確定し、静岡地裁で始まった再審で、検察官、弁護人の主張が出そろった段階で出した【袴田事件再審「証拠ねつ造の可能性」を徹底分析~「無罪判決」でも事実解明は終わらない】では、再審公判での検察官・弁護人双方の主張について解説し、最大の争点が「5点の着衣の証拠改ざん」であり、それが肯定された場合に、その後に予想される事態、についても私見を述べた。
今回出された再審判決に対しても、マスコミや世の中の論調に流されることなく、内容を客観的に分析し、検察の控訴・不控訴の判断に関して問題となる点を解説すること、そして、この事件をどう決着させるべきかについて私見を述べることは、私自身に課せられた責務と言うべきであろう。
袴田事件再審開始決定までの経過