精神史観と経済史観

まず「精神(宗教)史観」は一番古く、社会システムを変えるには人間の意識であるとする「唯心史観」として周知されてきた。それが宗教に特化すると、ウェーバーの有名な「プロテスタンティズムと資本主義の精神」に代表される「宗教史観」となる。

時代的にはウェーバーに先行したマルクスの経済(唯物)史観がある。これは精神史観を止揚して、社会システムの推進力は生産力・生産関係に左右されるという認識に変更された。

人口史観

第三の人口史観は高田保馬によって彫琢された社会変動図式であり、人口構造を社会の量質的組立と見て、社会構造分析の独立変数とし、残りはこの従属変数と見なす社会変動論である。この社会の量質的組立とは、「数量及び性質から見たこれら構成員の組み合せ(高田、1948=2003:224)を指す。

この人口史観は、精神史観(第一史観)と経済史観(第二史観)の批判的な検討から、高田が人口を軸として独自に編み出した。ただしその一つの手がかりは高田本人が記したように、ジンメル(1917=1979)の次のような僅かな示唆による。

ジンメルの示唆

「経済的変化自身、既に根本的な社会学的変化の一つの現われ」(ジンメル、前掲書:30)、「歴史上の変化は、その真に活動的な層から見ると、社会学的諸形式の変化ではないか」(同上:30)、「諸個人及び諸集団が如何に関係しているか、個人と彼の属する集団とが如何に関係しているか、中心的価値、蓄積、特権が社会的諸要素の間で如何に移動しているか――これこそ真に時代を作る変化ではないのか」(同上:30)、「経済も社会学的変化によって規定され、経済形態も『上部構造』にすぎない」(同上:30-31)というジンメルのいくつかの言説を手がかりに、唯心史観と唯物史観の精緻な検討を踏まえて、高田が練り上げたのが人口史観である。

情報史観