バイデン政権側からすれば、政権の拡大がイスラエルの早期の完全全面勝利に終わる見込みが高いのであれば、日本の佐藤正久参議院議員のようなジンゴーイズムの態度もとれるだろうが、それは楽観的過ぎる見込みであり、危険が大きい、と考えているはずである。

もしイスラエルにさらなる大きな損失が出るようであれば、トランプ前大統領の格好の攻撃材料となり、11月の大統領選挙に向けた致命傷になりかねない。選挙の直前に火遊びは禁物である。表向きイランを非難しながら、実際にはイランの態度を計算して、イスラエルの抑制を求めて、戦火の拡大を防ぐ方が得策だ。

イスラエルのネタニヤフ首相も、この事情はわかっているはずである。ただ、国内政治事情から、冒険的な行動をとりたい願望も捨てきれないのも確かだろう。次の展開の全ては、ネタニヤフ首相が、合理的行動を求める国際社会の気運を無視し、国内政争の事情を優先させた非合理的なジンゴーイズムの政策判断を選択してしまうかどうかで、決まってくる。

日本政府は、まずは冷静に現状を把握しなければならない。そして親イスラエルの国会議員らのジンゴーイズムの声などに惑わされず、むしろ日本の国益にそって、「事態の鎮静化」に向けた外交努力、あるいはせめてそれを求める国際世論の醸成に貢献するための努力をしていかなければならない。

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