一つ目に「前回ご紹介した」とあるので石破氏のブログに当たってみた。そこにはこうあった。
故・小室直樹博士の「韓国の悲劇」(カッパビジネス・昭和60年)は誠に優れた深い論考です。30年以上も前の、中曽根康弘総理・全斗煥大統領時代に書かれたものですが、それだけに本質を見極めておられるように思いました。
小室博士の・・一連の著作には随分と蒙を啓かれたものですが、本作も、いま書店に平積みしてある「嫌韓本」とは全く厚みを異にする論考です。
筆者も小室信者としては人後に落ちないので、書棚には憲法・宗教・経済・中国など原論物、ソ連・韓国・昭和天皇など悲劇物、国際法学者色摩力夫氏との共著、そして日下公人氏との対談「太平洋戦争、こうすれば勝てた」等々の三十冊近くが並んでいる。
が、「韓国の悲劇」が「読み易い」とはご自身が碩学の石破氏にして言えること。浅学を自任する筆者には、その語り口の平易さとは裏腹に実に難解な内容で、再読再再読によっても容易に小室氏の言わんとするところが理解できなかった。カッパビジネスだからといって決して侮れない。
要するに、古今東西の歴史の知識は当然ながら、宗教、国際法、倫理学、論理学、心理学、社会学、経済学から果ては民族学等々の、ありとあらゆる分野に渡って一定程度の予備知識を持ってから読むのでないと歯が立たない、そこらの嫌韓本とは「厚みを異にする論考」なのだ。
倉前盛通氏が「大変にきびしい韓国論である」とカバーに書いている通り、日本にも韓国にも厳しい内容だ。筆者がそこから読み取った日本にとって一番厳しい指摘は「朝鮮人に対する差別がなくなっていないこと」であり、韓国にとって最も厳しい指摘は「何でも韓国が本家で日本が分家という論理」だ。
つまりは双方が相手を軽んじているということで、小室氏は「差別は人類の宿痾だから、対症療法では治せない」とする。が、世界に通用する円と通用しないウォンの話から「一見、旭日昇天の韓国経済だが、日本経済との格差を如実に見せつけられる思いがする」として、結局は、韓国を大目に見よ、と仄めかしているように筆者には読めた。